

大西 |
それでは次に、ホームインスペクターの資格を取られて、ご自身の業務に実際に活かされていることや、今後取り組んでいきたいとお考えのことなどありましたら教えていただけますか? |
市川 |
私の場合、資格を取得するために得た知識というより、取得してから交流が広がり、得た知識の方が大きいかと思っています。 |
大西 |
たとえば、どのように? |
市川 |
主に新築住宅市場においてのマーケティングを行っているのですが、ご存じの通り既に新築着工は激減している一方、中古住宅市場やリフォーム市場は拡大化しています。 |
大西 |
鹿嶋さんはいかがですか? |
鹿嶋 |
建物を調査して、内容をわかりやすく説明するというホームインスペクターの仕事は、今までやってきた建築・不動産の仕事の延長線上にあると思っています。 |
大西 |
今まではイメージだけで売っていたけれどそういう生活感のあるアドバイスをちょっとできるだけで、すごく身近なものとして購入者の方にはわかりやすく伝わるんですね。 |
鹿嶋 |
また、私も最近会社を立ち上げて準備しているのですが、今までの経験と、ホームインスペクター試験の内容とをうまく組み合わせた形で仕事がしていければと思っています。 |
大西 |
それは素晴らしいですね。今後のゆくえがますます気になります。試験を通じて、結果独立し、幅が広がっていくというのは、新しい会員さんにとっても参考になると思います。 |
鹿嶋 |
あとは、今所属している会社にも、今後こういうことをやっていった方がいいのではないかと提案したりしています。 |
大西 |
ありがとうございます。 |
内山 |
私は設計をやってきたのですが、実際、設計をやる人間って図面や空間をつくることに魅力を感じているところがありますが、ホームインスペクターは検査そのものが仕事となりますので、業態が異なります。 |
大西 |
お題目として政策的にも「ストック市場に転換した」と言われて、 |
内山 |
そう、それだとなんとなく夢がないじゃないですか?! |
大西 |
古い建物を診断するのはこんなにカッコイイ!と。 |
内山 |
そうですね。 |
田中 |
私はホームインスペクターの資格をとったことで、B to B(企業間取引)は別としても、個人間の取引の場合は、原則ホームインスペクション付きの仲介事業にしようということで、いろいろ準備をはじめているところです。 |
大西 |
それも軌道にのってきたところで、ぜひ会報誌で取材させていただきたいですね。 |
田中 |
あと、先ほどお話したような「これ絶対雨漏りじゃない?」といったことが多少なりとも見抜けるようになってきたかなと。 |
大西 |
それについては理事の大久保さんいかがですか? |
大久保 |
それを補完するように既存住宅の瑕疵担保責任保険というのがでてくるわけです。 |

大西 |
実際のところはもちろん非破壊の限界というのはあるなかで、それでも熟練のホームインスペクターが見ればかなりのことがわかるという、ホームインスペクター自身の精度・スキルを上げていく取り組みも当然重要になってきますね。 |
菅 |
僕の場合は今まで似たような仕事をやってきたので、自分に対して活かすというよりもどちらかといえば、自分がもっている知識をフィードバックできればという思いがあります。 |
田中 |
この前人間ドックで胃カメラ飲んだときの感じとまったく同じですね(笑)。 |
菅 |
そう、だから調査を手伝ってもらう職人さんにも不用意に声を出さないようにって教育してるんですけど、そういう実務中の実務的なことって経験していないと絶対わからないんで、これからホームインスペクションに取り組まれる方々にお伝えできればと。 |
大西 |
経験していない方にこそ、知っていただきたいことですよね。 |
菅 |
ホームインスペクションってサービス産業なんで、知識だけでなく、お客さんとどのようにコミュニケーションをとっていくか、というところの大切さもお伝えできればと思っています。 |

大西 |
では最後に… |
市川 |
この資格のための勉強はほとんどせずに、合格してしまったので偉そうなこと言えませんが、今年の試験からテキストや過去問題がありますのでそちらで勉強されておくと良いと思います。 |
内山 |
私は建築系の人間なので、その立場からいえば、 |
田中 |
確かに取引の流れみたいなところは、何かの本に書いてあるというわけでもありませんし、宅建の知識ともちょっと違いますしね。 |
大西 |
建築系の本にはまずないでしょうしね。 |
鹿嶋 |
自分はどちらかというと不動産系、仲介業の方に受けてもらいたいと思うので、少なくとも建築の知識は身につけてほしいと思っています。 |
大西 |
そうですね。 |
鹿嶋 |
自分に知識があれば、多少問題を抱えた物件についても、売主に対して「こういう風に売ればいいんじゃないか」とかアドバイスもできるのですが、知識がないと、とにかく売ればいい、何かあった時は法律・契約でしばっておけばいいという発想しかできなくなり、それがあると買主さんも戸惑ってしまうところがあると思うので。 |
大西 |
確かに契約でしばってしまうことで短期的には自分はその物件から早く手をひけたとしても、結局は「中古はこわい」というイメージが広がることによって買う人が少なくなってしまう、それが自分の首をもしめてしまうという循環があるかもしれません。 |
鹿嶋 |
もし中古を買って失敗してしまったらそれを友達とか、知り合いとかに言うと思うんですよ。 |
菅 |
鹿嶋さんがおっしゃるように、技術的な裏づけは必要だと思います。 |
田中 |
僕は仲介屋さんで受験をしようとしている人たちに告ぐって感じで、 |
大西 |
建築系・不動産系と密接につながっているようで分断されている2つの業界の人が、お互いの分野のことを勉強しあったら、バイリンガルじゃないですけど強みが増しますね。 それでは、最後の最後になりますが、今年受験予定の方、受験しようか迷っていらっしゃる方に何かひとことずつメッセージをいただけますでしょうか? |
田中 |
ホームインスペクションという仕事っておそらく今後の日本の住宅業界にとって極めて価値ある仕事になるだろうと僕は思っていて、それは住宅産業を活性化させることで経済成長につながるという意味でも、また不動産は人が住まう以上幸せと豊かさと安心を得られなければならない、そういった意味でも。 |
大西 |
今後、厳しい業界で生き残っていくためには必要でしょうね。 |
田中 |
差別化のひとつとして絶対必要だと思うし、早めにやったもん勝ちだと思います。 |
内山 |
新築も先細りといわれている中、設計事務所としてはリフォーム・設計のみならず、ホームインスペクションという選択肢も持っておいた方がいいと思います。 |
市川 |
今後、住宅ストック型社会に向かっていく中で、住宅の仕様・流通・劣化についてバランス良く分かっている人材がこの業界で求められていくと思います。 |
大西 |
菅さんもおっしゃっていましたが、「この分野だけ」という細い部分でのスペシャリストというよりも広く知識があって、総合的に提案できる人材が必要になりますよね。 |
鹿嶋 |
ユーザーさんも昔は一つの仲介業者に任せる人も多かったですが、今はいろんな業者さんをまわって、比較検討されている。なので知識を持っている方が絶対強いと思います。 |
大西 |
ユーザーの方が賢く、かつ熱心に勉強されていて「担当者」も見極められていますね。 |
鹿嶋 |
誰から買うかということも、重みを持ってきますね。 |
菅 |
10年くらい前までは診断という業務はゼネコンさんや知り合いの方から「そんな仕事で食っていけるのか」と言われてきましたが、僕の中では既存の建物というのは今後必ず新しい産業になる、ビジネスになると思っていました。 |
大西 |
業界のなかで分断されている建築と不動産業界の橋渡し、ユーザーと業界の橋渡しといろんな役割を担うのがホームインスペクターで、今後ひとつのビジネスチャンス、新しい常識の形という風になっていきますね。 今回は皆様ありがとうございました。 |
※1:既存住宅の瑕疵担保責任保険: http://search-kashihoken.jp/session/
※2:両手取引:ひとつの不動産業者が売り手と買い手双方から手数料を受取る取引
※3:昨年度試験の参考図書:
建設住宅性能評価解説 2008 (既存住宅・現況検査―一戸建の住宅編)
木造住宅工事共通仕様書 平成20年改訂(全国版)