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金子清之氏インタビュー

~協会理事 金子清之氏に聞く~

受講のきっかけ

私は、住宅の設計、積算、施工管理、リフォーム工事を行なう会社を埼玉県内で経営しています。業務に有効な資格として取得した公認ホームインスペクター資格から波及したこの研修は、協会のホームインスペクションに対するスタンスがあってのことであり、宅建業法改正に伴うインスペクション(インスペクター)とは違う視点で資格を活かせると思い、受講しました。
また、協会の理事としても、会員の皆様にお薦めできる新しいサービスとして、その内容については理解を深めておかなければならないとも思ったからにほかなりません。

調停人候補者研修の内容

通信受講はWEBとDVDのどちらかが選べますが、私はスロットにDVDを挿入するという行為をもって、受講体制に自身のスイッチの切り替えができる、DVDで受講しました。 構成は以下の通りです。

  • 調停人としての法的知識に関する研修(テキスト+DVD3枚)
  • 調停人としての面談技法および調停技法に関する理論的研修(テキスト+DVD2枚)
  • 調停人としての面談技法および調停技法に関する実践的研修(テキスト)
  • 調停人としての倫理、活動に関する研修(テキスト+DVD1枚)

DVDは計6枚、15時間のメニューです。一気に・・・はさすがにできませんでしたが、通常業務の区切りがついた時に少しずつ進めて、時間が比較的自由になる休みの日などにまとめて視聴しました。お盆休みと重なったので、まとめて視聴に充てることができました。視聴後に、調停人としての面談技法および調停技法に関する実践的研修があります。(別途会場にて座学、要予約制)

受講後の感想

良かったことをまず挙げると、調停人として最も理解をしなければいけない法律のひとつである民法について、基本から学び直すことができたことです。日常生活ではもちろんのこと、業務の上でも、常に頭に入れておかなければいけないことなんだと再認識するに至りました。法律用語というか、文言の独特な言い回しを理解するのは大変ではありましたが。
倫理・活動に関することは、かなりの範囲でJSHIの行動倫理規定と重複しているので、その辺りはスンナリと頭に入りました。

建築の施工に関する専門知識についてはいうまでもなく、研修では、対人コミュニケーションについても学びます。DVD研修と実践的研修を受けてみて、一般的な業務活動としての「営業手法」と「調停人としての面談技法」とは、少し違うのだと認識しました。
調停人の場合では、必要とされる対人コミュニケーションが、自分と「相手」ではなく、それぞれで立場が違う「相手」と「相手」との間で発生するのです。調停人は、2者の中間に位置して、両者のコミュニケーションの促進をはかる、活発化させることを求められます。
この点については、少し視点を変えて学ぶ必要があると思います。

ホームインスペクターに求められるもの

会員の皆さんには共感していただけると思うのですが、住宅建設の現場において問題になるのは、現場に介在している人物に何らかの問題があって、揉めてしまうというケースがほとんどではないでしょうか。経験上、私はそう思うのです。それこそ100%といってもいいくらい。
極端な例ですが、柱が傾いた、床が傾いたといった問題には、必ずそうなった原因があり、その原因さえ取り除けば、ほとんどの場合において、修復することができます。しかし、厄介なのは、修復しても相手に納得してもらえないケースです。それは、修復に至る過程での対応や態度、原因を追究する真摯な姿勢の欠如など、不具合本来の原因とは違うところで発生する、発生させてしまったことによる。それが、いわゆるクレームになってしまう。

施主様との日々のやりとりの中でも、相手の立場を考えていない言い方や、勝手な推測や思い込みによって、言葉が不足することがありますね。たとえ言った者に悪気がなくても、立場が違えば考え方も違ってくる相手には、心の中に引っ掛かり、それがストレスや不安となって溜まってしまって、ある時を境に爆発してしまう。そうなると、気持ちの問題ですから、なかなか修復することができなくなってしまう。
だからこそ、常日頃から、人との接し方、言葉遣いというものが、とても大事になってくるわけです。

共感から学べる研修内容

このADR調停人研修では、コミュニケーションの必要性について実に深いところまで追求しています。理論的に順序立てて学びながら、自己分析までできる。とてもわかりやすくて、勉強になりました。
ホームインスペクターにとって、コミュニケーション能力が求められることは、JSHIのホームインスペクター行動倫理規定でも謳っていますね。資格試験にも問題として毎年必ず出ます。エリア部会の研修会でも、ワークショップをやるなどして力を入れているところがあるようです。このADR調停人研修は、会員の皆さまにとって、まさに共感から学べる研修内容だと思います。

資格取得後のお客様の反応

研修の修了後、登録手続きを経て、日本不動産仲裁機構から「調停人登録証」が届きます(年間登録料:10,800円)。厳密にいうと、日本不動産仲裁機構に対して紛争の当事者から調停の申し立てがあり、同機構の登録者の中から選ばれ、指名されて初めて調停人となるので、調停人候補者であることを証明する、という表記になっています。
ちなみに、指名されても辞退することができます。業務として受けられない時期、状況というのはどうしてもありますから。逆に、調停人登録者が関わっている紛争において、当事者双方の同意のもと、“逆指名”してもらうかたちで調停人になることも可能です。

研修修了後のイメージ

私は名刺に保有資格を明記しているので、お渡ししたお客様から「これってどういう資格ですか?」とたいがい訊かれます。建築士ほどの知名度はありませんが、「調停人」という言葉からだいたいの想像はつく。そこで一言、「不動産の施工に関する紛争を、話し合いで解決するために必要な知識と技能を証明するものです」とお伝えすれば、お客様はすぐ納得されますし、派生していろいろと話も弾みます。
なにより、お客様に「この人はいろいろ勉強しているぞ」「頼りになりそうだぞ」という安心材料を提供できるのではないでしょうか。

生涯現役を貫くために

調停人というのは、ある種の人間不信に陥っている人間関係を、話し合いで修復しようと試みる立場ですから、ある程度の経験と、人生の研鑽が必要かもしれません。私は生涯現役を貫いて、これからもずっと仕事をしようと思っているのですが、年をとって、力仕事ができなくなる、屋根の上に上がれなくなる日がいずれくるでしょう。そうなったときに、自分の知見を活かす、このADR調停人の資格が、生涯の職能として有効になるのではないかと考えています。

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